📌 日本全国で見られる貴重な皆既月食
2025年9月8日(月)の未明、日本全国で皆既月食を観察することができます。
全国で条件よく見られる皆既月食は、2022年11月8日以来およそ2年10か月ぶりです。
次に日本で皆既月食を見られるのは2026年3月3日ですが、それ以降は2029年1月1日まで起こらないため、今回のチャンスはとても貴重です。
⏰ 現象のタイムテーブル(2025年9月8日)
- 部分食開始:1時27分頃
- 皆既食開始:2時30分頃
- 食の最大:3時12分頃
- 皆既食終了:3時53分頃
- 部分食終了:4時57分頃
皆既状態は約1時間23分続き、比較的長い月食です。
ただし、終了間際には地域によってはすでに月が沈んでしまい、観察できない場合があります。
おすすめ観察時間:
深夜から明け方にかけての現象なので、体力的に無理のない範囲で計画しましょう。
特に「赤銅色に染まる月」を見たい場合は、食の最大となる3時12分前後にあわせて観察すると良いです。
🔬 皆既月食で月が赤く見える理由
月が完全に地球の影に入っても、真っ暗にはならず赤黒く見えます。では、なぜでしょうか?
理由は、地球の大気を通った太陽光にあります。地球の大気は光を散乱させる性質をもち、波長の短い青い光は散乱されやすく、波長の長い赤い光は散乱されにくく進みます。そのため、地球の大気を通って月に届くのは主に赤い光となり、皆既中の月は赤銅色に染まって見えるのです。
この現象は、夕焼けや朝焼けが赤く見えるのと同じ原理です。つまり、皆既月食の赤い月は「地球に大気があることの証拠」でもあります。もし地球に大気が存在しなければ、皆既中の月は完全に真っ暗に隠れてしまうでしょう。
✨探究の視点:
「なぜ月は消えてしまわないのか?」という問いから、大気の働きや光の性質を考えることができます。さらに、「もし地球に大気がなかったら月はどう見えるのか?」と仮定してみると、科学的な想像力が広がります。
📝 観察の工夫と注意点
- 方位と高度: 夜明け前は月が西の空に沈みかけています。観察場所は西の地平線がひらけているところがおすすめです。
- 観察道具: 肉眼でも十分楽しめますが、双眼鏡があると色の違いや月の模様がはっきり見えます。
- 写真撮影: 三脚を使い、シャッタースピードを調整すると赤銅色の月をきれいに記録できます。
- 体調管理: 深夜の観察になるため、防寒や休養を忘れないようにしましょう。
📚 学びへのつながり(中学理科)
該当単元: 中学3年理科「地球と宇宙」
・月食の仕組み(太陽-地球-月の位置関係)
・光の散乱と大気の働き
・天体現象と観察記録の方法
入試との関連:
天体の位置関係を図で説明する問題、時間計算や方位の作図問題などに頻出します。
✨探究の視点:
「月食はなぜ全国で同時刻に見えるのか?」という問いを立てると、地球の影の広がり方や日食との違いを考える探究活動につながります。
🔎 STEAMの視点から読み解く
🔬 科学(Science)
皆既月食は、地球の影に月が入ることで起こります。赤銅色に見えるのは、大気を通った太陽光のうち赤い光だけが屈折して届くためです。この現象は夕焼けと同じ原理で、光の散乱や地球大気の働きを理解するきっかけになります。天文学と気象学をつなげて学べる題材です。
🛠 技術(Technology)
天文シミュレーションやスマホアプリを使うと、月食の始まりや終了を正確に予測できます。双眼鏡やカメラを利用すれば、肉眼では見えにくい色の違いまで記録可能です。撮影では三脚や露光時間の工夫が欠かせず、観測を支える技術が学びをより深いものにします。
🏗 工学(Engineering)
地球と月の運動を計算し、月食を正確に予測できるのは工学的なモデルのおかげです。人工衛星や宇宙探査機の軌道設計にも同じ計算が応用されています。自然の動きを再現する仕組みを学ぶことで、工学と天文学のつながりを体感できます。月食は宇宙工学への入り口ともいえます。
🎨✍️ 芸術・リベラルアーツ(Arts)
古代から月食は神話や文学に描かれ、人々の想像力をかき立ててきました。赤く染まる月を俳句や絵画で表現することは、文化的な価値を持ちます。さらに、写真や動画として記録することは科学的観測であると同時に芸術的表現でもあります。科学と芸術が出会うテーマなのです。
📐 数学(Mathematics)
月が影に入る時間や位置は、相似や比例、角度や時間の計算で説明できます。こうした数式を使うことで、月食などの天体現象を正確に予測できるのです。
ガリレオが「この世界のあらゆること、万物の理(ことわり)の書物は、数学という言語で書かれている」と語ったように。
数学は自然現象を読み解くための言語であり、宇宙を理解する鍵となります。
🌏 まとめ
2025年9月8日の皆既月食は、日本全国で観察できる数少ない天文ショーです。
深夜から明け方にかけての観察になりますが、最大食の3時12分を中心に「赤い月」を楽しむことができます。
天体現象をただ眺めるだけでなく、
「なぜ赤いのか?」「なぜ全国で同じ時刻に見えるのか?」
と問いを立てることが、理科・数学・探究学習へとつながります。
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